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「ご自分で決めて贈りたいんですって。意味も分からず人に適当に見繕ってもらったもんを渡したくないっておっしゃってたわよ、この前」
観月さんがさらりと会話に混ざる。でもそれっきりで、俺たち二人が揃って見つめても彼女はぼんやりとお爺さんとココネさんの方を見守っていた。
「観月さん、大丈夫ですか」
そっとひそひそ声で尋ねると、彼女は苦笑しながら答えた。
「あらやだ、そんな顔に出てる?」
「顔死んでますよ」
眼の下にクマありますよ、ちゃんと寝れてます? と尋ねると目ざといな君はと言って彼女は笑った。いつもの綺麗な涙腺の下で、クマの皺がちょっと寄ってやっぱり疲れているように見える。
「昨日はデスマーチの手伝いしてたからねえ。大丈夫体調悪いとかじゃないから。ありがとね心配」
「ですまーち?」
なんだか不穏な響きがする聞きなれない単語に眉を潜めた俺の目の前で祐介が立ち上がった。そしてそのままふらふらとお爺さんとココネさんの所へ向かっていく。
「おい、祐介?」
まさかそこにいきなり突撃するんじゃないだろうな。慌てて奴を止めようとしたときには、もう奴は二人に向かって話しかけていた。
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