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ロートに上昇したサイフォンの湯とコーヒー粉を混ぜていく作業中の俺は、あの二人の会話に屈託のない大胆さで祐介が突入していく様子をただ黙って見ていることしかできない。
でも俺の心配は杞憂だった。祐介はどんな人間とも打ち解けられる、もはや特技とも言うべき対人コミュニケーション能力がある。だから口数の少ない俺とも普通に喋れるのだ。
あれよあれよと言う間に彼は会話に加わり、コーヒーとココアを運ぼうとする俺を満面の笑みで手招きした。
その笑みになんだか嫌な予感がする。
「どうかしましたか、お客様」
「お前ならさ、四つ葉のクローバーの見つけ方分かるよな?」
「は?」
他の客の手前、敢えてお客様対応にしようとした瞬間、突然そう言われて思わず俺は元の口調に戻ってしまう。
「四つ葉のクローバー」
祐介がもう一度繰り返す。
「いやそれは聞こえたけど、なんで急に」
「この茶髪のお兄さんが提案してくれてな」
お爺さんが祐介を指し示す。祐介はにっと笑って補足した。
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