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パンとクローバー

「四つ葉のクローバー、つまりシロツメクサの葉を探すとき、見つかりやすい環境は２つ。
川土手とか、水分がたくさんある場所や割と日陰のところ。光合成を効率よくするために葉を増やそうとする可能性があるからです。もう１つは、人が沢山通るようなあたり」
「なんで人が沢山通るところなんですか？」
ココネさんがしゃがみ込みながら聞いた。同じ高さになった目線がなんだかくすぐったい、気がする。
そして彼女の手にはいつの間にか、いつか見たB5のノートとペンが握られていた。

「四葉が生まれる原因は突然変異もしくは成長点に傷がつくことだと言われています。成長している過程で成長点に傷がつくと、その傷から分裂して葉が増える。人や動物が通ったり、ある程度の負荷が植物にかかる場所の方が見つかりやすいんです」
　まずはその辺のこんもり茂ってるあたりから探してみてください。そう言うと、お爺さんは素直に頷いてしゃがみ込み、真剣な目でシロツメクサの葉を眺め始めた。

「辛くなってきたらちゃんと休んでください、俺たちもいますからね」
　そう呼びかけても反応がなく、お爺さんは黙々と真剣に葉を探している。集中しすぎて周りの音が聞こえなくなっているみたいだ。
　こりゃ途中で無理にでも休憩させないとな、と俺は苦笑した。