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しばらく経っても、お爺さんは集中したままだった。黙々と探しているところを見ると、まだ四つ葉は見つかってないらしい。俺たちもまだ見つけていない。
「そろそろ休憩しましょう」
隣にしゃがみ込んでそっと肩を叩くと、お爺さんははっと顔を上げた。
「何分経った」
「探し始めて、そろそろ15分です」
まだたったの15分か、とまたクローバー探しに戻るお爺さんに俺はストップをかけた。
「休まないと、疲れ溜まりますよ。元気な状態で奥さんに贈り物を届けないと」
「いや、まだまだ」
「人間の集中力が持つのは15分です。一回休みますよ」
渋るお爺さんに、俺はきっぱりと言い切る。きっとこのお爺さん、誰かが止めなければいつまででもクローバーを探しそうな勢いだ。
「ほら、そこのベンチで休みましょう」
ココネさんに目配せをすると、彼女はこくりと頷いてお爺さんをベンチへ引っ張っていくのを手伝ってくれる。二人に言われちゃ仕方ない、とお爺さんはしぶしぶベンチに座った。そして座った瞬間、ほうと息をつく。
「集中してて気づかんかった、足に疲れが溜まるな」
「しっかり休まないと。根詰めて無理しちゃだめですよ」
声をかけてよかった、とほっとした。本当ならここで水分も取ってほしいところだが、あいにく追い出されるように出てきたから持ち合わせがない。お爺さんに無理をさせないように早く切り上げてまた探すことにしよう、と俺は算段をつける。
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