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「あと15分探したら、喫茶店戻りますからね。ゆっくり休んでください」
「それは困る」
俺の言葉に、お爺さんは頑なに首を振った。「見舞いは明日なんだ」
「明日!?」
押し花にしてラミネートをかけるとして、と俺は時間を逆算する。どう考えても今日中に見つけなければお見舞いには間に合わない。
でもお爺さんの体力を考慮すると探し続けるのも問題だ。今は9月下旬。夕方になればなるほど少し肌寒くなるし、体力が奪われてしまう。
どうしようか、とぐるぐる考えていた時だった。
それまで黙っていたココネさんが、唐突にベンチからぴょこんと立ち上がった。
「大丈夫! 私、探してきます!」
「え、ちょっと」
俺が止めるよりも早く、彼女はベンチから歩き出して川土手にまた降りていく。先ほどまで俺たちが探していた場所あたりで彼女はしゃがみ込んだ。
俺とお爺さんは目を見合わせて、ベンチから立ち上がる。その瞬間だった。
「あ、ありましたー!」
ココネさんが立ち上がってぶんぶん腕を振った。そんな都合のいいことあるわけない、と俺は半信半疑で彼女の元に向かう。
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