パンとクローバー

30/52
前へ
/270ページ
次へ
「観月さん、体調は」 「もー大丈夫、迎えにきましたよ皆さーん」  ひらひらと手を振りながら、黒縁メガネのポニーテール美女が俺たちを出迎えた。 「見つかったみたいで、よかったわ」  観月さんがココネさんにウインクする。そしてお爺さんに向かってにっこりと微笑んだ。 「お疲れ様でした。カフェ・メープルに特別メニューをご用意しましたので、ぜひゆっくり休んでください。そんでもって馨くん?」 「はい?」  最後に飛んできた言葉は俺宛だ。何を言われるのだろうとどぎまぎしていると、彼女は「お疲れ様」と言ってにやりと笑う。 「押し花とラミネート、うちのもの使ってしおり作っちゃうわね」 「了解です、ありがとうございます」  この展開を見通していたのかというくらい、準備がいい。観月さんの不思議はますます深まるばかりだ。彼女の背中を追いかけながら、俺はかなわないやと心の中で呟いた。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

557人が本棚に入れています
本棚に追加