パンとクローバー

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******* 「馨さんにまだ聞いてなかった。どうして三つ葉のクローバーには「復讐」って花言葉があるんですか?」  お爺さんが帰ってから、俺はカフェ店員としての動きを再開した。祐介が呼び込んで来た女性客の相手をしている合間に、水を注ぎにきた俺にココネさんが尋ねてくる。 「ああ、それは……」 「馨! 申し訳ないけど、オーダー頼めるか?」  祐介の客引き(本人は自覚ないらしいが)で店内はいつもより人が多い。祐介が申し訳なさそうにカウンターの向こうで手を合わせた。 「ごめん、また後ででいい?」  そう言いながら時計を見ると、もう18時半近くだった。  ココネさんがいつも帰る時間だ。 「……いえ、大丈夫です。お仕事中にすみません無理言って」  そろそろ帰らないと、とココネさんが立ち上がる。 「無理じゃない。今度また絶対教えるから」  俺の言葉にココネさんが伏せていた目を上げた。 「そう。そう……ですね」
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