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「高校と言えば、最近ココネちゃん来た?」
「……来てない」
そう、ココネさんはここ一週間ほど来ていない。前は俺がバイトに行くたびに毎回いたのに、全く姿が見えないのだ。おかげでいつもの席はここ数日空っぽのままで、そこを見るたびに心のどこかに同じようにぽっかりとした空間が空いたような妙な気持ちになって困る。
「エプロン返してもらいそびれたままなんだっけ?」
「そ。ドタバタしててすっかり忘れてた」
次いつ来るんだろうなしまった、と言いながらもう一つ約束があったことを思い出した。ただ、それは二人だけの秘密、と言った手前誰にも言わないことにしている。
「そういえばクローバーの時さ、ありがとな。俺じゃ考え付かなかった」
「いや、俺完全に思い付きだから。見つからなかったらどうしようとかちゃんと考えてなかったわ。なのにそこにいい感じに花言葉の解説までつけてさ、やっぱお前すげえよ」
「いや俺は別に……」
そういえばさ、と祐介がふと思い出したように俺の言葉を遮る。
「ココネちゃん最初漢字で『虞美人草』って書いたんだって? すげえな、ぱっと言われても俺書けねえよ。 やっぱ清和高校だし頭いいんだな」
「……感心するところそこかよ……」
やっぱり祐介はどこかずれている。でもそれが憎めない。もう一度肩を組もうとしてくる腕を押しやって、俺は苦笑した。
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