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祐介と会話しながらだとカフェへの道のりはあっと言う間で、俺はいつものように喫茶店のドアを開ける。
「あ、来た来た!」
観月さんが艶やかなポニーテールを翻してカウンターの中から手を振ってくる。その左手に持っているものが視界に入って、心臓が一拍、大きく鳴った。
彼女が来ている。
「馨くーん、エプロンもうなくしちゃだめよ。わざわざ洗濯までして持ってきてくれたんだから」
ほら、と黒エプロンを手渡される。「すみません」と言いながらいつもの席を見た。
本当にいる。
落ち着いて心が軽くなって初めて気付く。ココネさんがいる光景が、いつの間にか俺の日常になっていたことに。
「……直接返してくれてもよかったのに」
観月さん経由で渡されたことがなんだか少し面白くない。なんでだろ、と首をひねる俺に観月さんが囁いた。
「だんだん馨くんの表情、分かるようになってきたわ。今面白くない、って思ってるでしょう」
「え」
「随分仲良くなったみたいね?」
「え、いや、あの……そんなでもないですけど……すみません」
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