ホットココアさんとホトトギス

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 ただこの男、信じられないくらいに勉強ができる。そして根は真面目なのだ。講義も出席を重視されないものはよくサボっているくせに試験の出来は常に良いらしく、単位を落としたことが一度もない。おそらくきちんと勉強しているのだろう。俺たちのいる政治経済学部はこの大学の看板学部。ほいほい単位を取れるほど甘い講義ばかりではない。  現に今日も講義がやばいと踏んだのか、飯アポ――ご飯のアポイントメント(約束)はキャンセルしたらしい。 「それよか、さっきの名言よ。思いっきり本音出ちゃってんじゃん、しかも本人前にして」  祐介の言葉に、俺は思いっきり顔をしかめて見せながら答える。 「言うなよ、今自己嫌悪に浸ってるんだから」  ほんとにお前もさ、報われねえよな。そうぽつりと言ってから祐介はにたりと笑った。 「まあ切り替えようぜ、今日お前これからバイトだろ。来んじゃねえの、なんだっけ、えーとこの前話してたあの子」  そうだ思い出した、と祐介が指を鳴らす。それとほぼ同時に講義開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。 「ホットコーヒーさん」 「ちげーし」  教授が講義室に入ってくるのを確認し、俺は短く返して正面のホワイトボードとプロジェクターのスクリーンに目を向ける。 ――ホットココアだ、ばかやろう。彼女はきっと、ホットコーヒーなんて飲めない。
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