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「この喫茶店に素敵な花言葉教えてくれる店員さんがおるって主人が言ってましてねえ」
夫人がふわりと笑う。
「ほんまに、ありがとうございました」
いえいえそんな、と俺が頭を下げるとお婆さんはにこやかに微笑んだ。
「そしたら、そこの茶色い髪のお兄さんがプレゼント考えてくれて、お嬢さんがクローバー見つけてくださった子やねえ」
お爺さんは経緯も全てお婆さんに伝えたのだろう、お婆さんは俺たちに話も聞いていないのに当事者をぴたりと当てた。
「この人が私のために色々人に聞いて調べてくれてた、それだけでももう十分やのに、さらに素敵なことをしてくれはって。手術の前、ああこれでもう十分や、って思うくらい嬉しかったんよ。それに、この人が美味しいパンをここに食べに来ようって励ましてくれて。それで落ち込んでた私もやっと、希望を持てるようになったんです」
そういえばお爺さんの奥さんがなぜ入院しているか、俺たちは全く知らなかった。どうやら手術をしなければならない病状だったらしい。
「そんで手術も成功したでしょう。もうねえ、皆さんのお陰だと思っとるんよ。なんとお礼を言ったらいいか」
ほんまに、ありがとう。お婆さんがもう一度繰り返して深々と頭を下げ、お爺さんも揃って頭を下げた。
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