0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
乙女の仕事場
人がこの町の名前を聞いても、きっと何処にあるかもわからない。
そんな町からまさかのちに世界の誰もが欲しいのと望む少女がいるなどと、誰が思うだろうか。
収穫前の田園を照らす、朝日の光。
此処には高層ビルも、Wi-Fiもない線路も手前の町が終点で届いてはいないのどかな村だ。
日本の中国地方と近畿の中間に位置いる恵多町。
最近やっとコンビニ(個人商店)がオープンしたぐらいの昭和臭漂う村
ではなく町と主張したのはささやかな見栄から来ているとか。
そんな山の影に佇む一軒家に彼女は祖父母と住んでいた。
台所で高齢の女性が朝食の準備をし、夫であろう初老の男は新聞を読むなどしているテレビからは違う目覚ましの轟音が聞こえてくる。
「・・また夜更かしをしたな」
仕事人のような道具箱や機械部品の棚の数々が仕舞われた引き出しや、工具に囲まれた部屋の中で
事務員が使う様な灰色の机に俯せていたのは
チョコレート色のショートボブに毛先が内側にかけて丸くなっている桃色の瞳が美味しそうな色をしている今年で16歳の高校生・燈ノ本 天音(ひのもと あまね)。
「ごめん、つい夢中になってて・・できるだけ早く直してって頼まれちゃって」
深夜二時までは記憶があったが、それ以降の記憶がなく大あくびをしながらいただきますすると、卵をかきまぜて卵かけごはんを食べる。
修理を依頼されていたのは、草刈り機で一部の部品が摩耗してしまっていて替えになりそうなのがあったので夢中になって直していたら寝落ちしてしまった。
「頼まれたから断れなくて・・」
天音は頼まれたら断れないタイプで、それを良い事に修理をいろんな人に頼まれてそのうち燈ノ本工具店の看板でも掲げそうだ。
「・・天音、まだ16歳なのにホントに高校生なの?」
流行に超鈍感で大抵のものは直して使うようにしていて、部屋はまるで工場化。
家で着る物は自分で手直したどてらなんてもの着て、平成生まれなのに昭和というか下手すると
大正時代の衣服を着ていて祖母の方がもっとお金をかければいいのにと心配するレベル。
最初のコメントを投稿しよう!