1. 儚い世界の少年達

2/9
前へ
/89ページ
次へ
 緑に囲まれた緩やかな丘の上に、エリアで唯一の学校がある。真新しい校舎は、中庭を囲んでコの字に建ち、一番目立つ中央の壁にはアナログ時計が飾られている。その校舎から見える整備された土のグラウンドでは、青いジャージ姿の生徒達が円く囲んで集まっていた。中央に立っているのは、同じくジャージ姿の二人の少年と、黒いタンクトップを着た教師だった。  少年の一人は長身で、シルエットが細い。ふんわりと膨らんだマッシュヘアだが幼い印象は無く、体型と身のこなしから爽やかに映る。 「テンプレート――童子切」  彼は目を閉じた。両手を軽く握り、体の前で腕を伸ばす。 「コンパイル」  周囲に浮かび上がった青い光が、一斉に彼の手の中に集まる。光の線は刀の形にフレームを構成する。放っていた光は光沢にへと変わり、日本刀の外観が作り上げられた。  少年は柄を握り、中段に構えた。剣先はぴたりと定まっており、構えだけでも技量がうかがえる。  対峙するもう一人は、日に焼けた健康的な外見の少年だった。色素の薄い黒髪は、太陽の下だと茶髪にも見える。腕まくりされた袖から、引き締まった筋肉が覗く。  彼は拳を握ると、右足を引いて半身に構えた。戦いの準備は、それで終わりだった。 「浅賀、武器はいいのか?」  彼らの間に立っていた男の教師が尋ねた。手には成績をメモするためのクリップボードを持っている。 「そいつ、作らないんじゃなくて、作れないんですよ」  周りで見ていた少年が代わりに答えた。子供達の間から笑い声が上がった。 「そうか。卒業までには覚えるようにな」 「努力します」     
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加