1. 儚い世界の少年達

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 しかし、電光石火の動きについていけた生徒はもう一人いた。往なされた刀の柄から片手を離し、手首を返す。薙がれた刃が攻撃を押し止める。真広に隙は無く、再び中段に構え直していた。  純は後ろに跳んで距離を取った。このままでは不利だと悟り、瞳に覚悟の色が浮かぶ。 「真広はさすがだな」  見学していた生徒が隣に話しかけた。 「うん。それに比べて、……相変わらず獣みたいなやつ」  生徒の見つめる先で、土埃が巻き起こる。  真広の眼前に、左の拳が迫っていた。純は地面を砕く激しい踏み込みと同時に、拳のリーチまで距離を縮めた。  カウンターに繋げるために、真広はそのジャブを柄で受ける。触れた瞬間に、それが過ちと知る。芯を捉えており受け流すことができず、予想外の威力に体が傾く。下から突き上げられた本命の拳をみぞおちに受けた。 「かはっ?!」  肺の空気をこぼす。当然、次の拳を振り被る男は、呼吸を待ってはくれない。真広は苦しさに耐え、奥歯を噛みしめ全身の力を振り絞って斬り付ける。  刃は裏拳に弾かれた。同時に踏み込みながら放たれた前蹴りに、再び腹を抉られた。勢い余って蹴り飛ばされ、グラウンドの上を転がった。 「手を抜かせるつもりなんて、毛頭ねぇよ。本気で来い」  純が蹴り足を下ろしながら話しかける。その足は、システムエラーでも起こしたかのように、ノイズがちらついて見える。     
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