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待つこと十数分、部屋中に良い匂いが充満して、ソワソワしているオレの目の前に用意されたのは、文句の付けようのないハンバーグ定食だった。
メインの皿には光輝く目玉焼きがトッピングされたハンバーグと付け合わせの野菜が乗り、御飯とスープがその横を飾る。
男子高校生が作るにしては上等すぎる。
食べなくても分かる。美味いと。
「お前さぁ、一体どこで料理なんて覚えたんだ?」
食欲をそそる匂いを嗅ぎながら、基本的な疑問をぶつけた。
「どこでってこともないんですけど。ウチ、母親が働いていたから、家のことは俺がやっていたので」
「へぇ」
それで洗濯も掃除も趣味なのか。
オレだったら、逆に嫌になるけどな。
「だから、遠慮しないで言ってくださいね」
「何を?」
「食べたいもの。いつでも何でも作りますから」
向かい側の席に座りながらシノブが言う。
「あ、でも次は焼肉でしたっけ」
さっきオレが文句を言った事を覚えていたらしい。
「いや、もう理由がないだろ」
焼肉はとても魅力的だけど、シノブの恩返しは前回のカレーの時点で済んでいる。
今回のハンバーグはその余韻みたいなもので、これ以上は何かしてもらう義理はない。
もちろん、作ってもらえるのは嬉しいんだけど。
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