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 外開きのドアは、そいつが座り込んだままでは開きそうもない。 「オイ」  少し大きめの声で言って、もう一度、今度は傘で突いてみる。 「・・・・・・ん」  今度は少し反応があった。  鬱陶しそうに身じろいだそいつの身体は、背凭れにしていたドアからズルズルと滑り落ち、完全に通路に横たわる格好になった。  心なしか、さっきより邪魔度が増している気がする。 「あれ?」  くぐもった声がして、通路に横たわっている頭が動いた。  ようやく目を開けたそいつは、状況が飲み込めていないらしく、のそっと上体を起き上げながら辺りをキョロキョロと見回した。 「寝ちゃったのか」  独り言を呟き、無造作に濡れた頭を掻く。 「やっと起きたか、このヤロー。もう少しで通報する所だったぞ」 「へ?」  声を掛けてやった事でオレの存在に気づいたらしいそいつは、間抜けた声を上げてこっちを見た。  目が合って、瞬間的にヤバい奴ではないと判断した。  人を見る目がそれほど長けている訳じゃないけど、そのガキの表情があまりにも間抜けていたから。  多少強めに出ても大丈夫な奴だと勝手に判断して、やや高圧的に攻めることにした。 「人の家の前で寝てるんじゃねぇーよ。起きたならさっさと退け」  座ったままでいるそいつをゲシゲシと蹴って、何とかドアの前から退かそうとした。  それでようやく、足蹴りから逃れるように、占拠していた場所から移動しやがった。  ここまで長かったな。  大学の授業とバイトで疲れているから、早く風呂入って寝たいのに、無駄な時間を過ごしちまった。 「あの・・・」  鍵を開けようとした所で、びしょ濡れのガキが申し訳なさそうに声を掛けてきた。  なんだよ。  まだいたのかよ。  さっさとどっか行けばいいのに。 「何?」  一応、返事はしてやる。  立ち上がったそいつは、華奢な身体のワリに思っていたより背が高かった。  高いと言っても、比べた基準はお世辞にも長身とは言い難いオレだけど。 「この部屋の人ですか?」  大真面目に訊かれた。  ジッとこっちを見る視線が痛いんですけど。 「だったら何?」 「ここに住んでいる人の知り合いじゃなくて、本人ですか?」 「オレがここに住んでいると、何か問題でもあんの?」  繰り返される質問にイライラして、口調が少し強くなってしまった。
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