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 どうやら、シノブにとってここは居心地の良い場所になってしまったようだ。  どうしてそういう事になったのかさっぱり分からないが、頻繁にやって来ようとするのだからきっとそうに違いない。  だったら、単純に居心地の悪い場所にしてしまえばいい。 「お前さ、自分が男だからって油断していると痛い目に合うぞ」  突き放すように言うと、シノブが不思議そうに訊き返してきた。 「痛い目って?」 「オレみたいに、男でも好きになるような奴の家に気軽に出入りしたら、どうなっても知らないって言ってんの!」  声が震えた。  身体の中で、全て壊れたような音が響く。  しかし、人がカミングアウトしたというのに、シノブの反応は薄い。 「どういう事ですか?」  怪訝な表情のシノブが更に訊いてくる。  どうやら、全部言わせたいらしい。  無自覚だろうけど、そういうのは性格が悪いって言うんだよ。 「あんまり懐かれると誘惑しそうになるから近づくなっていう意味だよ!」 「誘惑、するんですか? 深尋さんが? 俺を?」  シノブの表情は、とても意外な事を言われたように困惑していた。  そりゃそうだろう。
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