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「それは、お前がオレの言っている意味を分かっていないからだ」 「分かっているつもりです」 「分かってねぇよ!」  あまり深く考えていないに違いない。  実際に、オレが迫ったらシノブは引くに決まっている。  これ以上ないってくらいに。  その想像力も持たない奴が何を言っても、説得力はない。  「じゃあ、分からせてください」  突然、とんでもない事を依頼された、気がした。  空耳の可能性が高いので訊き返す。 「は?」 「俺のこと、誘惑してください」  はっきりとした口調でシノブが言う。 「・・・何で?」 「されたいからです」 「・・・ちょっと、意味分かんないな」 「深尋さんに誘惑してもらいたいです」  真面目な顔して何を言いやがる。  無知とはこれ程にも恐ろしいものなのか。 「いや、だから、高校生相手に、それは色々と拙いって言ってんだろ」  しどろもどろになってしまって、とんでもなく引いているのは自分の方だと気付く。  おかしい。  何故オレが、こんなに動揺しなければならないんだ。 「よろしくお願いします」  念を押すようにそう言ったシノブは、恐ろしいくらいに笑顔だった。
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