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03
「良かったじゃないか」
シノブとの間に起った出来事をウララさんに相談すると、予想だにしなかった言葉が返ってきた。
「どこが!? と言うか、何で?」
「好みだったんだろ。懐かれている勢いで取り込んじゃえばいいんじゃね?」
なんて雑でテキトーで乱暴な意見だ。
「ただの興味本位ですよ」
そういう事に興味がある年頃だからな。
本当はオレが女だったら良かったと思いながらも、男同士がどういうものなのか覗いてみたいだけなんだろう。
「分かっている」と言っていたけど、ついこの間まで中学生だったガキが、本当の意味で理解しているとは思えない。
「いいじゃねぇか、ただの興味本位でも。うまくいけばラッキーだし、拒絶されたら追い出し成功ってことで」
「・・・そうですかね」
とは言え、オレの思考とシノブの思考に隔たりがあるのは確かだ。
「あいつがあまりにも純真で怖いんです」
「純真な奴が、興味本位で誘惑して欲しいなんて言うか?」
言わないとは思うけど、ウララさんだってあの時のシノブの輝くような瞳を見れば同じように思う筈だ。
「オレにどんな目で見られているかなんて、絶対に分かってないんですよ」
「だったら、とっとと分からせてやれば?」
ウララさんは他人事だからそんな簡単に言えるんだ。
「ウララさんだったら、こういう場合どうします?」
「どうって?」
「その、どうやって分からせればいいと思いますか?」
何か良い意見が聞けるかと期待を込めて訊く。
「俺がお前なら、まずベロチュウ的なやつでもするかな。めちゃ濃厚なやつ」
「マジですか」
若干引き気味に聞く。
「殴られたり、逃げられたらそういう要素がなかったって事だし、気持ちいいって思われたなら先に行けばいい」
何だか投げやりな意見だよな。
そんなに単純に行くだろうか。
「まさかそれ、実体験ですか?」
茶化すように言うと、ウララさんはニヤリと笑ってオレの頭を小突いた。
「あんまり深追いすんなよ。高校生に遊ばれるなんて情けないからな」
「オレが遊んでやっているんです」
心外な事を言われて少しムキになる。
「そうは見えねぇけどな」
見透かすようなウララさんの言葉に何も言い返せなかった。
シノブにそんなことして嫌われたら嫌だ、なんて考えが過っている時点で、オレの方が立場が弱いのは明白だから。
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