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情けないことに、びくりと肩が上下してしまった。
「な、何を?」
慌てる心を押し殺して訊き返す。
「あれから」とはいつのことで、一体何を考えたというのか。
どうでもいい事に決まっているだろうが、今は少しでもさっきのシノブの言葉を理解する時間を欲しかった。
「俺はやっぱり、深尋さんに抱かれるよりは抱きたいです」
「・・・・・・は?」
混乱しすぎた頭が思考を止めた所為で、間抜けな声が口から出てしまった。
こいつ、今なんて言った?
「深尋さんの事情もあると思うんですけど、俺の希望は抱きたいです」
どういう経緯でそんな事を言い出したのか、全く理解できない。
そもそも、オレの事情って何だ!?
オレだって、お前とヤるなら抱かれたい方だわっ!
「意味が、解らないんだけど」
自分に都合の良い展開になる筈がないので、別の可能性を考えつつ慎重に尋ねた。
「この前言っていたじゃないですか、俺のことを誘惑するって。深尋さんに誘惑されるのは嬉しいんですけど、できれば俺に抱かせてもらいたいです」
何やら説明をしてくれているようだが、笑顔で言い放つ内容があまりにも衝撃的だったため、脳内が思考停止中となりフリーズしてしまった。
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