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ガキが目を覚ましたのは次の日の朝だった。
正確には、いつまで経っても起きようとしないのに腹を立てたオレが、前日同様に蹴り起してやったのだが。
「・・・ユキちゃん?」
朦朧とした意識の中でも、ガキは馴れ馴れしく昨日と同じようにオレを呼ぶ。
オレの名前は本郷深尋で、オレが記憶している限りそんな風に呼ばれた事はない。
「だから、誰だよそれ」
ベッドも布団もオレの分しかなかったので、床に寝かせたガキを見下ろして訊いた。
「・・・・・・シノブ」
小さい声をそう名乗って、また目を閉じてしまった。
今のは、こいつの名前か?
ユキちゃんって子の本名がシノブなんてことはないだろうし。
いや、苗字と名前という事も有り得るか。
まぁでも、シノブっていうのは、きっとこいつの名前なんだろうな。
「寝るなって」
今の言葉を問いただそうと、ゴンともう一度頭を蹴ってみたが、僅かな反応しかない。
気のせいか、顔が赤いような?
恐る恐る額に触れてみると、思っていたより熱かった。
もしかして、発熱していたりして。
昨日のあの雨の中、濡れたままで外で寝ていたのだから無理もない。
自業自得だな。
とは言え、この傍迷惑な病人をこのままにもしておけないか。
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