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「何でオレが・・・」  つい出てしまった愚痴を残して、冷凍庫の中から製氷皿を取り出す。  いつ作った氷なのか思い出せないが、口にする訳じゃないからいいだろう。  ガラガラとスーパーの袋の中に氷をあけて、タオルで包んでシノブと名乗った(と勝手に判断する)病人の頭の下に置こうとした時にハタと気づいた。  頭を冷すのは、熱が上がりきってからだったっけ?  汗をかいている時に冷しちゃいけないって、どこかで聞いたような・・・。  自信はないけど、そんなような事を聞いた気がした自分の記憶を頼って、病人の首元に触れてみた。  凄い汗だ。  困ったことに、オレには誰かを看病した経験がない。  自分がしてもらった経験を辿って、まず最初にすべきことを決める。  熱が出たといったら、やっぱり氷嚢だろ。  それに代わるものはもう手にある。  あとは風邪薬。  お粥に、汗を拭くタオルに、着替えに・・・あ、まずは体温計で熱を測るのか。  面倒だな。  何で見ず知らずのガキの為に、このオレがそんな事をしてやらないといけないんだ。 「!?」  溜め息を吐いたのが聞こえたのか、不意に病人に手を掴まれた。  何されるのかと構えていたが、それっきり何も起こらない。 「ユキ・・・ちゃん」  か細くて掠れた声が、たどたどしくそう震えた。  どうやら、「ユキちゃん」であるオレに手を握っていて欲しいようだ。  まったくガキだな。 「やっぱり、病院に送っとけばよかった」  独り言で後悔を口にしながら、この部屋のどこかに体温計があっただろうか、と散らかった室内を見回した。
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