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 どうしても欠席できない講義のために大学に行くと、教室で先輩のウララさんと一緒になったので一通りの出来事を話してみた。  誰かに話したかったし、意見を聞いてみたかったので丁度良かった。 「それで一晩泊めたのか?」  シャーペンをクルクルと回しながら、ウララさんは呆れたように訊いてきた。  ちなみに「ウララ」というのはあだ名だ。  字面だけだと可愛い女の子を想像するだろうが、実際はただの20代半ばの普通の男だ。  ウララさん曰く、中学生の時からすでにそう呼ばれているので現在では全く違和感はないらしい。  周りからすれば違和感有りまくりだけどな。  初めてその名を聞いた時の衝撃は、今でもよく覚えている。  「どこが?」って思いっきりツッコミ入れた記憶があるな。  今では当然のようにウララさんって呼んでいて、本名言われても「誰?」ってくらい分からないけど。 「泊めたんじゃなくて、置いてやっただけです。外に捨てておく訳にもいかないでしょ」 「お前がそんなに親切な人間だったなんて、知らなかったな」  オレも知りませんでしたよ。  だけど、これは親切とはちょっと違う気がする。  一度家に上げてしまったら、もう放り出せなくなってしまったんだ。  何かの拍子で死んでしまったりなんかしたら、オレのせいみたいで後味悪いし。  それに、何て言うか・・・。 「好みだったのか?」 「はぁ???」 「そのガキだよ」  真顔のウララさんのセリフが何を意味しているのかなんて、十分理解できていた。  ただ、認めたくはなかった。 「・・・何でそういう発想になるんだか」 「違うのか」  ウララさんは意外そうに首を傾げた。  さすがにいい勘してる。  年の功には敵わない。  伊達に、人生経験と称したバイトに明け暮れて大学生を6年もやってないな。 「・・・・・・まぁ、悪くはなかったかな」  素直に認めたら、少し気が楽になった。
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