星に願いを

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「あっ!ほら見て!星がよく見える」 彼がはしゃいだ声でベランダの方へ歩いて行った。 付き合いたての頃はいつも私に星なんか見て何が楽しいのなんて言っていた癖に。 いつの間にか私より空を見上げているね。 「なんか今日はよく見えるね。新月だからかぁ!えっと…オリオン座でしょ?」 夜空を指さす姿はまるで子供のようだ。 この横顔を見つめているのだ好きなんだよなぁ。 私たちが見ている星は実は全部恒星で、全部太陽みたいなもので。 見えている全てに銀河があって…その全てにまた惑星があったら…。 本当に宇宙人いるかもしれない! ってキラキラした目で言ってたね。 「北斗七星も見える!あとあれも!ほら…なんだっけ…あのWの…えーっと」 スマホで『w 星 冬』なんて検索してる。もう夢中じゃん! 「カシオペア座か!そうそう!それ」 嬉しそうに笑う。 そんな無邪気な所も好き。 「ほら…その二つが分かれば北極星が分かるんでしょ?」 おー!よく覚えてたね! そう…北極星が見つけられたらどこにいても迷わないから。 「…でも見つけ方忘れたなぁ」 全く!詰めがあまいんだから! 「俺…一人じゃ迷っちゃうよ」 それじゃ困るよ。 「…神様。お願いします」 泣かないで。 「俺に…返して」 …今日は流れ星はひとつもないよ。
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