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二ヶ月ぶりに会った董子に、「すっかり見違えっちゃって」と驚かれた。
「そうかな」
「うん、なんか生き生きしてるよ。若返った感じ」
「そんなに老けてた?」
「老けてるっていうか、前は生気が感じられなかった」
相変わらずの物言いだが、董子は嬉しそうに頬を緩める。
「うまく行ってるんだ」
董子が望んでいるような答えは返せない。あれから、キスはおろか手さえ繋いだことがない。付き合っているというよりは、一緒に遊んでいるだけだ。
「いいトモダチ関係だよ」
「なーんだ。じれったいの」
そんな話をしながら食堂でいつもの日替わり定食を食べていたら、背後から軽く肩を叩かれた。振り返ると、トレーを持った浅野が立っていた。
「浅野、」
話題の人物の出現に驚いて、目を丸くする僕に、浅野は「午後から会議があって来ました」と笑った。隣の董子をちらりと眺めると、「どうも」と軽く会釈する。
「浅野くん、久しぶり」
「お久しぶりです、水城さん。倉橋さんとお知り合いだったんですね」
「ええ、蒼一とは長い付き合いなの」
「そうなんですか。……倉橋さん、隣いい?」
それから二人とも無言で食べているから、なんともいたたまれなくて、「二人は知り合い?」と訊ねてみる。
「うん。もう十年くらい前から知ってる」
「そうですね、もう十年も前だ」
また無言。なんだなんだ、と思っていたら、突然董子がくすくすと笑い始めた。
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