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これまでも曇りだったり、時折小雨が降ったりした日はあったけれど、何とか天気に恵まれていた日曜日だった。しかし、今は梅雨の終わりの時期だ。
朝起きたら、ゴンゴンと唸るような大雨が降っていた。さすがに今朝のランニングは無理だろうと思って貴裕にメッセージを送ると、すぐに電話が鳴った。
「俺んちで昼飯食いませんか?」と提案される。
「いいけど、お邪魔していいのかな」
「全然いいですよ。俺一人暮らしだし」
「ここが地元じゃなかったっけ?」
「うちの親に『十八過ぎたら実家から出ろ』って追い出されたんです。だから、大学から一人暮らし。今から迎えに行ってもいい?」
「うん。雨酷いから、気をつけて」
身支度を整えて、窓の外を眺める。本当は僕が住所を聞いて行ってもいいのだけど、そこは甘えてみた。貴裕はかなりの世話好きで、自分から率先して動くのが好きだということは、ここ数ヶ月の付き合いで十分承知している。
それにしても、僕は貴裕について知らないことが多い。貴裕は、あまり自分のことを話さない。一人暮らしだということを今し方知ったように、あの左脚についても、何故切断したのかもいまだ聞いていない。
それでもなんとなく、自分から訊ねるよりは、貴裕が話したい時に話してくれたらいいことなのかなと思い、敢えて問うたりしないでいる。
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