4.聖夜の奇跡

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「……ずるい」 「ん?何か言った?」 「…………ずるいよ」 堪えていた涙が溢れてきて、顔を覆った。俊が「え、ちょっ、待って」と焦っている声が聞こえる。 さっきから男に絡まれてただでさえ目立っていたのに、泣き出したからさらに目立ってしまっている。 「なんか、俺が泣かせたみたいになってる」 「俊が、泣かせたん、でしょ……」 しゃくり上げていると、いつかのように手をそっと握られ、涙を拭われた。 それでも私の涙が止まらないことに俊はため息をつき、ハンカチを取り出した。 「勘弁してくれ、薫の泣き顔を見るのは辛い」 「悪かった、」と彼は謝った。 どうして困った顔すらも愛しく思えるのだろう。 カップルなんて羨ましくない、と思っていた。それは確かにそうだったのかもしれない。けれど私が本当に羨ましかったのは、俊といたあの頃の自分だったのだ。
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