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私はとっさに「……許さないっ」と言った。私はいつからこんなにひねくれた女になったのだろう。
きっと俊も幻滅したはずだ。
恐る恐る目を開けると、彼は笑っていた。
私は驚きのあまり声が出なかった。
「…………なんで、笑ってるの?」
「いや、素直じゃないところも可愛いな、と思ってさ。社会人になってこんなこと言うとか恥ずかし」
何だか、俊はそういう事を言い慣れている気がして、私は涙目で彼を睨んだ。
「……何だよ」
「なんか、俊、そういうの言い慣れてる気がする」
「そんなことないって、本当に。大学で彼女とか作らなかったんだからな。薫と比べてしまう気がしてさ」
その言葉を聞いて、また涙腺が崩壊する。
「よく泣くなあ」と俊がボヤいた。
「ごめん、私意思が弱くて!居たの、彼氏。俊と比べてしまって、そんな自分が嫌っていうワガママで自分本位な理由で別れちゃったけどっ」
俊はついに私の隣に腰掛けた。そして背中をさすってくれた。
「別にいいよそんなの。今いないんだろ?」
私はこくりと頷いた。
「なんでこの可愛さに誰も気づかないかなあ」
「……私もそう思う」
「そこは否定しないんだな」
俊の良さに何故周りの女の子達は気づかないんだろうか、と一瞬思ったが、彼が女の子を振っていたのを思い出して考えるのをやめた。
「じゃあ俊は、私が誰かと付き合ってて良かったの?」
「んなわけないだろ、ばか」
デコピンをされて、「いたっ」と額をおさえる。
「また泣くよ」と脅すと、「どうぞ?」と返答があった。
「ちぇっ」と軽く舌打ちして行儀よく座る。それにしても俊は、ますますかっこよくなった。
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