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するとその場にいる人がざわつき始めた。俊も私を抱きしめていた腕を解いた。
辺りを見回すと、皆空を指さしたりして、何か言っている。
「あ、雪......」
私はあの日の俊と同じ動作をして、空を見上げた。
「なんか、奇跡が起こりすぎな気がするな」
「私もそう思う。一生分の運使い果たしちゃったかも」
私達は微笑んで、手を繋いで空を見上げる。そこにいる人は皆空を見上げている。真っ白な雪が、街灯の明かりに照らされて光っている。
「皆、幸せになれるといいね」
「自分のが叶った途端に皆の幸せも願うのか。変わらないなあ、薫は」
「私、いい人だもん」
「自分で言うな」と俊が怖い顔をする。「は~い」と私は返事をした。
「まるで俺達への、いや皆への、聖夜の贈り物だな」
「またロマンチックな言い方する」
「今日だけだよ、クリスマスだからな。明日にはこんなこと、口が裂けても言えない」
だから今日言う、と俊は言った。
「いつまでも変わらない。大好きだよ、薫」
俊は私の頬にキスをした。私はたちまち真っ赤になってしまい、皆が空を見ていて良かったなと思った。
「私も」と言ってし返す。不意打ちだったからか、俊が目を丸くする。
そして数秒空いて、私の唇を俊の唇が塞いだ。ほんの一瞬だったが、生きてきた中で一番嬉しかった。
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