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「何で、こんな事するのよ。あんた何考えてんの」
私は振り向いて、目の前の女に精一杯の憎しみを込めた目線を送る。
「それはこっちの台詞よ。あんたいい加減にしてよ。彼とは上手くやっていきたいんだから」
「気安く彼だなんて呼ばないでよ!」
「じゃあ他になんて呼べばいいのよ。気安くなんて言うけど、あんたなんかより、私の方がよっぽど彼のことを知ってるんだから」
「うるさいうるさい!何であんたは!」
私は激高して壁を殴りつけた。
その音を聞きつけ、一階から母が飛び出してきた。
「なぁに、大きい声出して。喧嘩はやめて頂戴ね、悠里ちゃん、美里ちゃん」
「だってお母さん、美里が…」
私は母に涙目で訴えた。
母は苦笑して私を見た。
「はいはい、美里ちゃんはお姉ちゃんの真似っ子したいだけなのよね。悠里ちゃんも、それくらいの事で喧嘩しなくてもいいじゃない」
母は強めの口調で諭した。
すると、美里は苛立ったようにして口を開いた。
「…お母さん、来月私この家出るから」
「え!?聞いてないわよそんなの」
「言ったら駄目って言うでしょ。大丈夫よ、お金の心配はしなくていい」
「そんな事言ったって…」
「連絡はするから。それじゃあね」
そう言って、鍵を開けて自室に入っていった。
私は分かってもらえない悲しみと苛立ちを抱えて自分の部屋に戻ろうとした。
すると、母は私の肩に手を置いた。
「…何、お母さん」
「いえ、お夕飯出来たから、ついでに呼ぼうと思って」
「いらない」
「そう、なら冷蔵庫に入れておくから。レンジで温めて食べてね…美里ちゃん」
母はそう言って下の階に降りていった。
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