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「ふぅん」
彼女はにこやかにそう言った。分かれ道に差し掛かり、彼女は私と別の方向へ足を向け、くるりと私に向き合った。
「また明日!」
彼女は満足そうに微笑んでいた。それがなんだかくすぐったくて、私は俯いて「じゃあね」を言った。空を見上げると、もうすっかり日が落ちかけて、地平線に少しだけ、オレンジが残っているだけだった。私は、ため息をついて歩き出す。
それは、十七歳を目前にした、三月の午後の事だった。私は、今日見た空を思い出す。春の気配に、そこはかとなく期待を寄せて、私は帰路を急ぐのだった。
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