センターは渡さない

あたしたちがデビューして一年。
色々あったけど、新人賞も無事に受賞することができたし、いくつかの曲では一位もとることができた。

そんなあたしたちのデビュー一周年を記念して開催されたライブの最後の挨拶の時。

いつものように締めの挨拶のするリーダーを見ていると、マイクを持つ彼女の手が急に震えだした。

「私たちがデビュー一周年を迎えられたのも、たくさんの方の支えがあってのことなので、事務所や関係者の方、それからファンの皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。
でも、私は......いちばんは、......ひぐっ......い、ちばん、は......ぐすっ......メンバに......」

リーダーは言葉を詰まらせ、ついには涙まで流し始めた。スクリーンには、リーダーの泣き顔がでかでかとうつしだされる。

なにいきなり泣いてるの？
みっともない、なさけない。
ぶっさいくな泣き顔。
アイドルなんだから、もう少し綺麗に泣けないの？

綺麗に泣くなら好感度も上がるかもしれないけど、リーダーは鼻水まで出しちゃってお世辞にも綺麗とも言えないし、この顔ははっきりいってスクリーンにうつしちゃダメだと思う。

リーダーの泣き顔には心のなかで引いたけど、ファンの前でもちろん感情を表に出すわけにはいかないから、優しく見守っているような表情を作ってそれをキープする。