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B「あれ、雪道、また写真撮ってるの?」
A「あ、白上くんだ、おはよ」
そうやって、いつも通り始まるやり取り。
雪の降る、どうしようもなく寒い休日の朝っぱらからカメラを構えている雪道わだちは、僕のクラスメイトだ。外見はいわゆる美少女って感じなのだが……。
A「白上くんは、今日何しにしたの?」
B「いや、普通に食べ物なくなったから買い出し。ジャンケン負けたんだ」
A「あー……、あの弟くんジャンケン強いもんね」
B「特にこういうやつはね」
A「寒いのにお疲れ様だね~」
B「まぁ、雪道のこと見てたらもっと寒くなりそうだけど」
A「そうかなー」
B「そうだよ、なんでそんな雪まみれになりながら写真撮ってるのさ?」
A「うーん、知りたい?」
B「気にはなるよね、やっぱ」
A「うんうん、素直でよろしい。じゃあ教えてしんぜよう、うんうん」
B「なんで神口調?」
A「気にしなさんな、白上くんとボクの仲じゃない」
B「そんなだっけ?」
A「むー、まぁいいや。えっとね、この雪景色を撮ろうと思ってさ」
B「この吹雪の中で?」
A「そんなに吹雪いてる? ……くしゅっ」
B「くしゃみしながら訊くことじゃないって」
A「単純に寒くてさ~、天気関係ない」
B「いやいや、普通にこの吹雪なら寒いでしょうよ。あのさ、僕そろそろ買い物行かなきゃだから店に向かってもいいかな?」
A「えっ……!?」
不意に僕に向き直り、寂しそうに瞳を揺らした雪道の姿は、雪道には悪いが、それこそとても画になる姿だと思ってしまった。
普段は飄々として、何かと人をからかうような言動が多いのに、根っこはわりと寂しがり屋。時々そういうギャップを見せてくるところがなんというか……ずるい。
だから、僕はまた、いつものように。
B「……もうちょっとだけ付き合おうかな」
A「………………っ! そう言うんだったら、いいよ? いやぁ、ボクも写真撮りたくて外にいるのになぁ~」
B「はいはい、付き合ってくれてありがとな」
A「……へへへっ」
あーあー、嬉しそうな顔しちゃって。
まぁ、それでちょっと気をよくしてしまう僕も同類か。
A「それでさ、今日はさ……」
上機嫌に話し始めたのに相槌を打って。
僕と雪道の朝は、もう少し続く。
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