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斗賀蒔の家は朱雀通りにあった。ヤミ陰陽師と言うのはことの他儲かるのかこの辺りの家では一番大きな家であった。家と言う言い方は相応しく無いだろう。屋敷と言った方がいい。
中にある家具も揃いすぎていると言うぐらいに揃っていた。長持と呼ばれる大体の物を入れる事が出来る長い箱、唐でも使っていた文机、燭台、灯籠。一人で暮らすには十分すぎるくらいだった。
「一人は寂しいからな、人形や式神でも呼んで暇を潰すか」
こう呟きながら寝殿の間を暫く歩き回った。
「無駄にこんなものまで作りおって」
御帳台に座った若者は自分の格好が余りにもこの場に合っていないことに気がついた。そして、塗籠(ぬりごめ)と呼ばれる物置に行き、そこに置かれていた紫と白に輝く狩衣を身に纏った。
「宮仕えはもう無理そうだし、ヤミ陰陽師でもするとするか」
ヤミ陰陽師、西京院万象(さいきょういん ばんしょう)誕生である。
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