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龍之介の事を意識し始めたのは、初めて彼の作ったお菓子を食べた時だ。
清美からは話しで聞いていたので、いつか会ってみたいと思っていた。
それが叶ったのは、原が仕事で暫く日本を離れる事になり、彼らの家に招待され、そこに龍之介も呼ばれていたからだ。
清美が話していた通りに、お菓子を作るのが好きな人だった。
しかもお菓子を作ってくれて、甘いものが好きで喜んで食べていたら、そんな自分を優しく見つめていた。
そして目が合って、心臓を打ち抜かれたわけだ。
住む場所が同じ方向にあり、途中まで一緒にかえりましょうと誘った。
もっと一緒にいたいし、この芽生えた想いを伝えたいという気持ちもあった。
少しだけ良いですかと近くの公園へと誘った。
「どうした?」
「一目惚れしました。好きです」
と告白したら、
「俺はノンケだから無理」
と断られた。
「えっと……」
ノンケってなんだとスマートフォンで調べたら、ゲイ用語らしく、同性愛のケのない人(その気のない人)らしい。
「あぁ、なるほど。って、俺、別にゲイって訳じゃないですよ?」
「はぁ? 俺、男だぞ」
「わかってますよ。男の人を好きになったの、初めてですし」
今までつきあってきた人は全て女性だ。だから違うと首を横に振るう。
「そのことはどうでもいい。ただ、良く知りもしない、しかも男と恋愛する気はない」
諦めろと肩を叩かれ、帰ると言って行ってしまった。
いつもならそこで恋をあきらめているだろう。だが、龍之介に対しては諦めきれない。
しかも会いたい気持ちが暴走し、店に通い詰めてた挙句にぐいぐいと押していたらすっかり嫌われてしまった。
どうしたら距離が縮まるのかと、龍之介の事を想うたびに二人の距離は離れていく。
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