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時折、姉のキャーと楽しそうな声が聞こえる。
珈琲をいつもより丁寧に入れて時間を稼ぎ、それを持って戻ると、二人は仕事の話をしていた。
「素敵なお話聞かせてもらいました」
「そうかよ」
「関町君」
「はい」
「龍ちゃんの事、よろしくお願いします」
と頭を下げた。
「え、姉さん」
「清美さん」
龍之介と関町の言葉が重なる。
「私にとって大切な家族なの。幸せになって欲しい」
「はい、大切にします」
「なっちゃんにも教えてあげなきゃっ。あんな事とか、こんなこと……」
「関町、何処まで話したんだよ」
余計なことまで話したのではないだろうか。
「え、龍之介さんは意外とエロいとか」
「せーきーまーちっ!!」
こめかみを拳でぐりぐりとする。
「龍之介さん、痛いですっ」
半泣きの関町に、清美はそれをスマートフォンで写真を撮って笑っている。
「お前はなんでも話すんじゃねぇよ。姉さんも根掘り葉掘り聞くな、腐女子め」
「ふじょし?」
関町には謎の言葉だったか、目を瞬かせる。
「男同士の恋愛が好物なんだよ、うちの姉はっ」
「あぁ、だから、ずっと前に『期待を裏切らないわぁ』と言われたことがあったんですけど、そういうことですか」
何に対しての期待だ、それは。
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