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「どうした?」
『つい買い物に夢中になっちゃって、ごめん、食事して帰るから関町君に食べさせてあげて』
「なんだと」
ナツメの誕生日だからと張り切って作ったのに、その主役に食べて貰えず関町に食べさせろというのか。
『ごめんね、龍ちゃん。私があれもこれもってママにお強請りしちゃったから』
ナツメが強請ったのならばしかたがない。誕生日なのだ。今日くらいは母親に甘えたいだろう。
「良いよ。料理はどうにでもなるし。ケーキだけは取っておくな」
『うん。後でママが取りに行ってくれるって』
「わかった。じゃぁな」
通話を切る。
眉間にシワが寄っていることだろう。関町がこちらの顔色を窺うように見ている。
「あの、清美さん、なんて?」
「お前に食わせてやれってさ」
二人がいないので自分が座るはずだった場所に関町を移動させ、自分は清美の場所へ座ることにした。
「あの、ワイン持ってきました」
「リースリングか」
辛口の白ワインだ。煮込んだ鶏肉料理に合う。
「ワインがお好きと聞きましたので」
「あぁ。俺もヴァン・ルージュを用意しておいたのだが、これを飲もう」
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