Anniversary

2/7
271人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「どうした?」 『つい買い物に夢中になっちゃって、ごめん、食事して帰るから関町君に食べさせてあげて』 「なんだと」  ナツメの誕生日だからと張り切って作ったのに、その主役に食べて貰えず関町に食べさせろというのか。 『ごめんね、龍ちゃん。私があれもこれもってママにお強請りしちゃったから』  ナツメが強請ったのならばしかたがない。誕生日なのだ。今日くらいは母親に甘えたいだろう。 「良いよ。料理はどうにでもなるし。ケーキだけは取っておくな」 『うん。後でママが取りに行ってくれるって』 「わかった。じゃぁな」  通話を切る。  眉間にシワが寄っていることだろう。関町がこちらの顔色を窺うように見ている。 「あの、清美さん、なんて?」 「お前に食わせてやれってさ」  二人がいないので自分が座るはずだった場所に関町を移動させ、自分は清美の場所へ座ることにした。 「あの、ワイン持ってきました」 「リースリングか」  辛口の白ワインだ。煮込んだ鶏肉料理に合う。 「ワインがお好きと聞きましたので」 「あぁ。俺もヴァン・ルージュを用意しておいたのだが、これを飲もう」     
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!