Un rhume

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Un rhume

 この日が待ち遠しかった。  朝から落ち着かず、お土産にかったワインを眺めては、まだ時間にならないとため息をつく。  あまり早く行くのも失礼だと、そう思いつつも家にいると時計ばかり眺めてしまうので外へ出た。  途中で時間を潰しながら、それでも七時より前に龍之介の部屋の前に着いてしまった。  嫌な顔をされるかもとチャイムを慣らしたら、案の定、眉間にシワが寄っていた。  だが、そんな事で心はめげない。そんなにがつがつした性格じゃないと思っていたのだが龍之介に対しては違うようだ。  部屋の中にも無事に上がることができた。流石に招待客を門前払いはしなかった。  龍之介の部屋はお洒落な部屋だった。流石にキッチンは広く、用具も綺麗に並べられている。 「姉に連絡するから待ってろ」  と電話をし始める。そこにナツメからメールが届いた。 <二人きりの時間はママとナツメからの誕生日プレゼント>  と書かれていて、ナツメの誕生日会は一週間前の関町の誕生日のお祝いへと替わった。  はじめからそのつもりだったのか、最高のプレゼントに口元が緩む。  清美との通話を終えた龍之介に見られぬようにスマートフォンをしまい、素知らぬ顔して言葉を待った。
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