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1冊の本
僕はゲーム会社を潰すってゆー妄想を抱きながら日々を送っていた。
図書館にやって来た。
ある1冊の本を手に取った。
『Catfish』
私の友、猫田サトルは独特な人格をしている。
私の記憶をさがす時、私はいつもあらゆる方面から私の目的に添うような話をさがし出そうとして苦労するのである。なぜなら、サトルがその心理解剖に全力を注いだと思われるような事件、あるいはまた犯罪捜査に特別な方法を見せたと思われような事件は、事実において、みなさんにお話してもつまらないだろうと思われるような簡単な普通な事件が多いのだ。またその反対に、事件がかなり特異なもので劇的なものを彼が捜査した場合もあるのだが、そうした時にはしばしば、彼は彼の伝記作者として私が話してほしいと思っているにもかかわらず、何も話してくれなかったのである。私が『Catfish』と題して集めた小事件。
猫田サトルと私、魚住博士が挑んだ事件の記録だ。
フォーチュン号の消失事件は懐かしい。
フォーチュンは豪華客船だったがイタリアのメッシナ海峡で姿を消した。
シルラと称する6頭の怪物と渦潮によって消されたとされているが、実はサトルはそれほど充分に活躍してはいないのだ。が、しかもなお、その事件のすべてのつながりは、彼の伝記的物語から、これを除外することがどうしても出来ないほど、特異なものなのである。
それは10 月の陰鬱な雨の日であった。私達は鎧戸を半分とざして、サトルはソファの上に横わりながらスマホを見ていた。
『私はインド勤務のおかげで、寒さよりは暑さのほうがしのぎよく、40度ぐらいの温度は苦しくはなかった。しかし読みつづけていた新聞はつまらなかった。議会が初まっていた。人々はみんな町から出かけていっていたが、私は玉戸森林の中にある草原や、銚子海岸にある砂浜にあこがれていた。アソコには宝物が眠っているって噂だ。帳尻の合わなくなった銀行勘定が、私に祝祭日をのばさなくてはならないようにしてしまったのである。
けれども「社長は無駄な仕事はするな!」と休日出勤を許さなかった。森林も海も行けなくなってしまった。彼は百万の大衆の真ただ中に寝ころんで、空想と推理の糸を自由自在にひろげたりたどったりして、いろいろな未解決な問題に暗示を与えたりすることのほうを愛していた。
支離滅裂な本だ。
どことなくシャーロック・ホームズを彷彿とさせた。
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