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 石川に出かけ前田にいろいろ聞いたがこれといった収穫はなかった。  その後、軽井沢にいる宇喜多に会いに行った。  事件当時、50歳だった署長は80歳になっていたがハキハキしていた。 「元はといえば相川が全て悪い。小池も1番に殺したいのは相川のはずだ」 「相川は前科者ですからね?殺されても仕方ない」 「まぁ、そうだろうねぇ?」 「署長も気をつけてくださいよ?」  宇喜多が相川を殺した可能性は高い。  相川さえいなけりゃドロップアウトする必要もなかった。  宇喜多は私立探偵を営んでいた。  悪いことしたから老体に鞭打って仕事しなくちゃいけない。  世の中には真っ当に生きてたって派遣切りに遭ったりして生活できない人間だっているんだ。 「君も私のようにならないようにしなよ?警察ってのはピラミッド社会だからね?」 「重々承知してます」  相川の死亡推定時刻、宇喜多は浮気調査をしていた。松本市のラブホテルの従業員として潜り込んでいたらしく、タイムカードでアリバイが証明された。 「若いってのはいいねぇ?夜明けまでスゴい声出していたよ」 「ハハハ」    宇喜多邸を出た桜田はパジェロに乗り込み、スマホのナビタイムを立ち上げた。次は井野を調べよう。当時37だった彼は現在は67歳、引退して水戸に住んでいるらしい。  大したお咎めもなく、最終的には警視庁捜査1課の管理官にまで上り詰めた。  宇喜多の駒に過ぎなかった為って理由もあるだろう。今夜は中軽井沢に泊まることにした。  スマホが鳴った。  毛塚からだった。当時、26歳だった彼は56歳。 桜田の指導役だったが、去年埼玉県警に栄転となった。 「毛塚さん、ケツがかいーです」とおどけてみせた。 『ちゃんと洗いなさい?それより、大変だ。秩父にある老人ホームで小渕裕美が殺された』
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