不純な贋物

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 付き合いはじめていつも聞く質問がある。 「ねぇ。僕の何が好きなの?」  大抵の答えは分かっていた。今までさんざん聞いてきた。少し考える素振りをして彼女は口を動かした。 「やっぱり優しいところかな」  その答えに今回も諦めをする。失望はなかった。いや。そもそも希望なんて持っていなかったか。  僕にとって優しさなんていうのは上っ面だ。贋物の顔。作りやすい仮面。  だって、そうだろう?こんなのも相手が欲しい言葉を言うだけだ。下らない。  好意が何処まで強い意思なのか僕には判断がつかない。折れない好意が欲しい。折れない好意を向けていたい。  だから、僕は今日も壊す。僕を壊しながら「彼女」を壊す。隣の「彼女」が向ける好意がちゃんと壊れないものなのか試すために。  そうして壊れなかったときに初めて、僕は僕の、彼女に向けた好意を守れていると信じられるのだから。
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