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不純な贋物
夢を見ていた。夢とすぐに分かった。
遠い記憶。今は無い場所。今はいない人。
懐かしい学校机が並べられていて、僕は少し軋む椅子に座らされていて、前の席の人と話をしているのだ。
夕日が差し込むには早い放課後にこうやって話をするのは僕の日課であり全てで、学校という場所の存在意義の全てだった。
「恋ほど汚い感情は無いよね」
初恋の人は言い放つ。
賛成するのに長い時間は要さなかった。彼女の語り事を戯言として扱えないくらい、自分に向けられているようなものだったから。
「そうだね」
だから、静かに一言を呟いたのだ。
自分が汚いと、僕は知っていた。
「勝手で、見たいところしか見ないで、押し付けて、崇めて、失望して」
要素を一つ数える度に、指を折っている彼女は悲しいくらいに楽しそうだった。
「なのに、人は恋をしようと躍起になる」
彼女はそう言って、窓の外に向けられた視線を僕に向ける。同意を求められたのか。あるいは……。
「そうだね。仮にするとしてもせめて秘して欲しいものだ。まったく面倒事は避けたいものだよ」
まったく、どの口が言うのだろう。半分嘘で半分本当の台詞で隠すのも一苦労だ。僕は嘘が苦手で、嫌いなのだ。
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