633人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
叫び出しそうになるのを堪え、死にきれなかった恥ずかしさを心に刻みながら、何も感じず何も思わず、自分をごまかし生きていく。もういい加減そんな生活に慣れてきたはずなのに。
── 自分は今、泣きたいのかな。
尋はそう思ったが、涙は出てこなかった。
人というものは、あまりにショックなことに出会うと、涙も出ないという。
あれ以来尋は、泣く方法を完全に忘れてしまっていた。
── バカバカしい。
尋は、涙の代わりに薄っぺらな自嘲の笑みを浮かべる。
── 今更泣いて、何が変わるというんだ・・・。
喉から絞り出される笑い声は、まるで嗚咽のようだった。
最初のコメントを投稿しよう!