act.05

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 イヤミったらしく顔を歪め、キンキンした嫌な声で言う海。その顔つきに尋は顔を歪めながらも、こいつもなかなかうまいことを言うなと内心感心した。  『息の仕方も忘れる』・・・か。  尋がその言葉を反すうしたその途端。  ずぼ。  突然、尋の目の前から海の姿が消えた。  もうもうと立つ砂埃の中、尋が驚いて辺りを見回すと、尋の足下に砂だらけの海の頭と両腕が砂から突き出ていた。 「おい、何だ。どうしたんだよ」  尋が動揺を隠せずに上擦った声で訊くと、砂にまみれて真っ白な顔をした海が、尋を見上げボソリと答える。 「先月掘った穴にはまった」  その海の台詞にキョトンとする尋。その尋を気まずい顔つきで見つめる海。 「なに、あんた。落とし穴にはまったの?」  尋の素朴な問いに、声もなくただ頷く海。 「しかも、それ、自分で掘った穴?」  またまた声もなくただ頷く海。その瞳は僅かながら潤んでいるようにも見える。  その羞恥に赤く染まる海の顔つきを見て突然、霧が晴れるように事を理解した尋が、声を上げて大笑いし始めた。 「あんた、つくづくバカにできてるな!」  尋は、よじれそうな腹を抱えながら、笑いに笑う。  海は真っ赤に赤面させた顔も俯き加減に、ぼそぼそと悪態をついている。 「うるせぇ。人の失敗笑うやつにろくな人間いやしないぞ」  やや涙声なのが情けない。     
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