act.02

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 尋は、まだ自分の身体が小刻みに震えていることに気がつくと、腹立たしくデジタル時計を床に払い落とした。そして深い溜息をつくと、尋は頭を抱えた。  身体は、どっと疲れを感じていた。少しだが、キリキリと胃が痛む。  まりあと一緒にギャラリーに行って以来、ここのところ毎晩同じ夢を見ていた。  貢とまるっきり同じ顔をしたあの若い画家のせいだ。  お陰でこの頃バイトも滞りがちになっているし、おまけに睡眠不足だ。  尋は腕の間から、空ボトルの先にある古い新聞記事を見つめる。   "高速道路で、バスと普通乗用車が正面衝突。バス・乗用車とも炎上。死者4名、重軽傷者25名"  その記事についてある写真は、丸焦げになった普通乗用車と運転席が焼け焦げているバスの写真で、その下には死亡者の写真が並んでいる。  上から三番目。  その年の春に撮ったクラス写真の切り抜きだった。  新聞の記事には、こう書かれてある。   "対向車線から飛び出したバスを回避できたのにも拘わらず、なぜ普通乗用車運転の瀬尾さんは回避行動をしなかったのかが、今後の事故原因の捜査の鍵となる。"  結局尋は、貢に謝ることができなかった。     
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