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act.05
空は、真っ白い雲がぽっかりと浮かぶ青空。
波は少し高い。
シーズン前の砂浜は、当然のように誰もいなかった。
「よく来るんだよ。ここら辺の浜辺。近所の悪ガキどもとさ」
「近所の?」
「おお。小学生だけどな。4、5人いるんだよ。やかましいガキどもがさ。そんで、砂浜にゴジラ描いたりとか、お城作ったりとか、でけぇ落とし穴掘ったりとかして遊んでんの。いつも」
その時の様子は、容易に想像できる。
どうせこの男のことだ。まるでガキ大将のように率先して暴れ回ってるのだろう。
「結構おもしろいぜ。子どもと遊ぶの。まぁ、マセてっけどな。やつら」
尋の前に回って後ろ向きに歩く海。尋は海に突っ込みを入れる。
「やつらがマセてんじゃなくて、あんたがガキなんでしょ。ただ単に」
尋の台詞を聞いた途端、むっと眉を寄せる海。
「失礼なやつ。お前こそねぇ、もっと自然と親しむ広い心を育みなさいよ。スポーツクラブのプールなんかで適当に水濁してねぇでさ。そんなんじゃその内、息の仕方も忘れちまうんじゃないの?」
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