~目が覚めるとそこには~

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陽一は声を出す事もできず、ただひたすらに口を金魚のようにパクパクと開閉するだけだ。 そこにどんな感情があるのか。 彼の気持ちがわかるほど親しくもないし、わかりたいとも思わない。 私が今思っていることは一つだけ。 ……掃除……大変だわ。 陽一の視点が定まらなくなってきたとき、美菜は彼にゆっくりとキスをした。 「これが最後のキスよ。これであなたは永遠に私のものになるわね」 その言葉は果たして陽一に聞こえたのだろうか。 陽一は大きく目を剥いたまま絶命した……。 そっと陽一の頬を愛おしそうに撫でる美菜は、この現実を受け入れる事ができるのだろうか。 二人の姿を見たとき、そこにあったのは私と美菜の姿だった。 そうか。 美菜は私だ。 信じていた愛を無くして行き場のない感情を持て余し、結果永遠に愛する人を閉じ込めてしまった。 私と美菜は、やはり本当に二つで一つのかけがえのない命なのだ。 だとしたら、美菜の心の傷を癒し私の心を解放してやる術はひとつしかない。 私はいまだ手にしていた赤く染ったナイフを、美菜の脇腹に深く食い込ませた……。
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