雪に鳴くなら

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「先輩!撮れましたよ!」 カメラのフォルダを見ると、そこにはしっかりと川辺に佇む野鳥の姿が収められていた。 「うん、よくやった!」 そう言って、先輩は嬉しそうに私の頭をポンポンと撫でた。 「……っ」 唐突な頭ポンポンと褒められた気恥ずかしさから、たまらず俯く。 「……やっぱり雪景色と小鳥ちゃんは絵になるね」 「えっ……あ、そ、そうですよね」 私を見つめる先輩の目があまりにも優しかったから、どぎまぎしてしどろもどろにしか答えられない。 「雪と鳥がいいコントラストになってて……」 「いや、違うよ。そっちもだけど──」 そう言いかけて、先輩は──。 「こっちも」 クスクスと笑って、もう一度私の頭にポンと手を置いた。 「えっ……?え!?」 飄々とした態度の先輩に、私の脳は沸騰寸前で──。 「せ……先輩……それは──」 寒さではなくわなわなと震える唇から、私は──。 「ただのキザです!!」 思いっきり叫んだ。 静かな雪空に私の声がこだました瞬間、一体どこに潜んでいたのか、たくさんの鳥たちがバサバサッと羽音をたてて一斉に飛び立った。 【end】
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