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居酒屋でもこの部屋でも俺達の距離感は変わらない。店にいる時よりもいくらかばかり近くなったような気もする。
俺のすぐ隣りには湊さんがいる。ソファーはゆったり広いけど、動くと時折腕と腕が触れる位置で言葉を交わした。
「来た時からずっと思ってたんですけどこの部屋すげえ綺麗ですよね」
「そうでもねえだろ」
「綺麗ですよ。掃除はいつも自分で?」
「ああ」
踏み込めずにいたプライベートにもう少しだけ踏み込みたくなる。
独身なのは知っている。恋人については、聞いた事がない。
「……これだけ綺麗にしてると彼女から勘繰られません?」
「問題ない。すでに彼女いない歴五年くらいになる」
「え、意外」
「あぁ?」
「湊さんって絶対モテる感じの人ですもん」
横から見ても前から見てもイケメンだ。後ろから見たってなんかカッコイイ。仕事もできそう。住んでいるのはこんなにいい部屋。高級感があるのに気取らない。
話し方は心地良くて、こっちの話にも毎回しっかり耳を傾けてくれる。会話の最中のアイコンタクトはすごくちょうどいい。その時の目元は、必ず穏やか。
優良物件だ。男から見てもいい男ならば女から見ても文句はないはず。ところが当の本人はさして興味があるようにも見えない。そのうえ少々言葉選びがキツかった。
「たとえ女がいたとしてもこの部屋には上げたくない」
「え?」
「面倒だろ。何かと」
「…………」
淡白。そんな雰囲気は確かに感じていた。優しい人だがその気質はちらほらと垣間見える。
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