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ハッとした。いつの間にか目が覚めていたようで、ぼんやりとした視界に、白い天井が映り込んでいた。
ピッ。ピッ。と、無機質な音とともに、すすり泣くような声が聞こえた。
鼻につく薬品の匂いで、ここが何処なのか把握することが出来た。
何故か動かない体に顔をしかめて、視線を声の方に向ける。
すると、大勢の顔が飛び込んできた。よく見ると、同僚や、今は会っていない同級生、俺を敵視していたはずの奴までいた。
さらに視線を動かすと、疎遠になっていた両親と弟もいた。
皆一様に暗い顔をして俯いている。 何がそんなに悲しいんだろう。
と、突然顔を上げた弟と目が合った。
みるみるうちに目を潤ませ、俺の名を叫ぶように呼んだ。
すると、一斉に顔を上げて俺を見る。
一瞬の沈黙の後、急に母親が泣き崩れた。釣られるように泣いたり、文句を言ったり、慌てたようにナースコールを押す者もいた。
皆違う行動をしているのに、指し合わせたように必ず、「よかった」と口にして、笑っていた。
それを見ていた俺の頬に、雫が伝った。
悲しくはないのに、涙が溢れた。
泣いて泣いて、ふと、夢の中の俺が言ったことを思い出した。
ああ、確かに。俺とお前は同じだった。勝手に俺が夢だと、夢の中の俺と本当の俺は違うのだと決めつけていた。
……目が覚めるとそこには、夢のような現実が広がっていた。
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